大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島地方裁判所 平成元年(行ウ)1号 決定 1989年9月11日

申立人 広島県

右代表者知事 竹下虎之助

右訴訟代理人弁護士 幸野國夫

右指定代理人 高橋利暢

原告 森脇勝義

<ほか四名>

右原告ら訴訟代理人弁護士 高村是懿

同 山田慶昭

同 吉本隆久

同 阿左美信義

同 津村健太郎

同 坂本宏一

被告(被参加人) 竹下虎之助

<ほか一名>

右二名訴訟代理人弁護士 竹村壽

被告(被参加人) 青木盛美

<ほか二名>

右三名訴訟代理人弁護士 那須野徳次郎

被告(被参加人) 冨士岡務

<ほか二名>

右三名訴訟代理人弁護士 大原貞夫

主文

本件補助参加の申立をいずれも却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

一  申立の趣旨及び理由

1  申立の趣旨

申立人が、原告森脇勝義外四名、被告竹下虎之助外七名間の当裁判所平成元年(行ウ)第一号五日市沖埋立て事業損害賠償代位請求事件(以下「本件訴訟」という。)に、被告らを補助するため参加することを許可する。

2  申立の理由

申立の理由は、別紙「参加申出書」及び「補助参加の理由」記載のとおりである。

二  原告らの異議

原告らは、申立人の本件補助参加につき異議を述べた。異議の理由は、別紙「広島県の補助参加理由についての反論」記載のとおりである。

三  当裁判所の判断

1  申立人は、民訴法六四条に基づき本件訴訟につき被告らを補助するため補助参加する旨の申立をしているところ、同条にいう「訴訟ノ結果ニ付利害関係ヲ有スル第三者」とは、訴訟の結果、すなわち判決の結論である当該訴訟の判決主文における訴訟物たる権利ないし法律関係の存否自体に関する判断について法律上の利害関係を有する者をいい、右にいう法律上の利害関係は、本案判決の主文における当該訴訟物自体についての判断が参加人の私法上又は公法上の権利関係ないし法律上の地位に影響を及ぼす場合であることを要すると解するのが相当である。

したがって、補助参加が許されるためには、右のような利害関係を有する第三者が、参加する側の当事者である被参加人を補助し、これを勝訴させることによって自己の法的利益を守ることができるものと認められることを要するのであって、参加申立人と被参加人とが訴訟物である権利関係の存否についての判断との関係において法的利害を共通にする関係が必要である。

2  これを本件についてみるに、本件記録によれば、本件訴訟は、広島港五日市地区港湾整備事業の施行に当たり、申立人の知事である被告竹下虎之助及び申立人の職員であるその余の被告らが関係一一漁業協同組合との漁業補償交渉において支出した食糧費のうち一六六一万三〇〇〇円は、違法な公金支出であると主張して、広島県の住民である原告らが地方自治法二四二条の二第一項四号の規定に基づき、被告らに対し右損害賠償を請求する住民訴訟であることが明らかである。住民訴訟のうち同条一項四号の損害賠償請求訴訟は、地方公共団体が違法行為をした職員に対して有する損害賠償請求権が適切に行使されないでいる状態を是正するため、住民が住民全体の利益のために、本来の請求権の帰属主体である当該地方公共団体に代位して右請求権を行使する訴訟である。したがって、本件訴訟の訴訟物は、申立人が被告らに対して有する損害賠償請求権であるというべきである。そうすると、本件訴訟において被告らが敗訴した場合には、判決主文によって申立人が被告らに対して私法上の損害賠償請求権を有する旨の申立人にとって利益な判断がなされるだけのことであり、被告らが勝訴した場合には、判決主文によって申立人が被告らに対して私法上の損害賠償請求権を有しない旨の申立人にとって不利益な判断がなされることになるのである。したがって、本件訴訟の訴訟物である損害賠償請求権の存否に関する本案判決の主文における判断について、申立人は、原告らとは法的利害を共通にし、これと対立する関係にはなく、これに反して、被告らとは法的利害が相反し、対立する関係にあることが明らかであって、原告らが敗訴し、被告らが勝訴することが先に述べた意味で申立人の利益となるものとは認められないから、申立人には、被告らをして敗訴の事態を避けるためないしは勝訴させるため、本件訴訟において被告らに補助参加する利益は認められないというべきである。

なお、申立人は、本件訴訟において被告らが敗訴した場合、申立人において損害賠償金を受け入れることを余儀なくされ、財務会計処理の見直しを要求されることを理由に補助参加の利益がある旨主張するが、金員の支払を受けるのに伴って会計上の是正措置を講ずることは、利益を受けることに伴う付随的な事後処理の問題にすぎず、これをもって被告らを勝訴させることにつき法的利益があるものとはいえない。また、将来的に財務会計処理のあり方を見直さざるを得なくなることが、本件訴訟の訴訟物である損害賠償請求権の存否の判断による不利益であるとはとうてい認められない。したがって、右主張のような理由をもって補助参加の利益を基礎づけることはできないというべきである。

さらに、申立人は、本件訴訟において被告らが敗訴した場合、申立人において地方自治法二四二条の二第七項所定の弁護士報酬支払義務が生ずることを理由に、補助参加の利益がある旨主張するが、申立人が弁護士報酬支払義務を負担することとなるのは、被告らに対する損害賠償請求権の存在が判決によって肯認されたことにより申立人が利益を受けることに伴って発生するいわば付随的な効果というべきものであって、弁護士報酬支払義務は、右損害賠償請求権の肯認という申立人にとって利益な判断と不可分一体的に評価されるべきものであり、義務の部分のみを取り出してこれを不利益と評価するのは適当でなく、弁護士報酬支払義務の負担を理由に補助参加の利益があると認めることはできない。

3  よって、申立人の被告らのためにする本件補助参加申立は、被告らを被参加人とする点で不適法であるから却下することとし、申立費用の負担につき民訴法九四条、八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 高升五十雄 裁判官 山﨑宏 蓮井俊治)

<以下省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例